1. 年収の全体像(現場の相場・判断基準)
- 相場観:雇用系は年300–450万円、個人開業は粗利次第で年400–900万円、拡張後は1,000万円超も現実的。
- 判断基準:①単価②稼働枠③成約率④継続(LTV)⑤固定費—この5軸の設計で年収はほぼ決まる。
- 最短ルート:雇用で実績→価格検証しながら個人開業→LTV商材(幼稚園・回数券・会員)で安定化
年収は「技術」よりも設計で決まります。
収益式=単価×枠×稼働日×成約率×LTV、損益分岐=固定費÷粗利率。この2つを押さえ、回数券・月額会員・幼稚園(継続)を早期に組み込めば、個人でも年600–900万円のレンジは十分到達圏。拡張(人材×仕組み)で年1,000万円超。
2. 雇用/個人開業/FC:稼ぎ方の違い
- 雇用:安定・学習効率◎。給与は年300–450万円レンジが中心。
- 個人開業:利益率と自由度◎。集客・設計が弱いと不安定。
- FC:ブランド・集客導線を借りる代わりにロイヤルティ負担。
雇用(正社員・契約)
- メリット:固定給・社会保険・学習環境。
- デメリット:上限が見えやすい、価格決定権なし。
個人開業(単独)
- メリット:価格設計・導線設計・商品設計が自由。
- デメリット:集客・資金繰り・多能工が必要。
- 向く人:行動量・検証力・数字管理に抵抗がない。
FC/のれん分けなど
- メリット:導線・運営ノウハウ・ブランド信頼を短期獲得。
- デメリット:初期費・ロイヤルティ・運用ルールの制約。
- 見るべき指標:初期投資回収月数=初期費÷月間営業利益(24か月以内が目安)。
3. 年収は「数式」で再現する(収益式・損益分岐)
- 収益式=単価×枠×稼働日×成約率×LTV。
- 粗利率は**(売上−変動費)÷売上**。役務は高粗利が基本。
- 損益分岐=固定費÷粗利率。固定費を先に天井設定する。
収益式
- 売上=単価×1日の実施枠×月の稼働日数×成約率×LTV係数
- LTV係数=初回成約後の継続回数・追加購入の倍率(回数券・月額・幼稚園・グッズ・オンライン講座等)。
損益分岐点
- 損益分岐売上=固定費÷粗利率
- 固定費(家賃/水道光熱/通信/保険/広告の固定枠/人件費の固定分/車両等)。
- 役務の変動費は低めだが、出張交通・決済手数料・素材/備品を見落としがち。
4. 相場比較表・年収シミュレーション
相場比較表(目安)
| 区分 | 初任給/基本 | 中位レンジ | 上位レンジ | 特色 |
|---|---|---|---|---|
| 雇用(正社員) | 240–300万円 | 300–420万円 | 450–550万円 | 地域/店舗規模/実績で差 |
| 個人(単独) | – | 400–700万円 | 800–1,200万円 | LTV設計と集客導線次第 |
| FC/多拠点 | – | 700–1,000万円 | 1,200万円〜 | 仕組み化・人材化が鍵 |
年収シミュ(パターンA:個人・回数券中心)
- 単価:8,000円/回
- 1日枠:4
- 稼働:22日/月
- 成約率:0.6(体験→回数券)
- LTV係数:1.8(追加/継続)
- 月売上=8,000×4×22×0.6×1.8=760,320円 → 年約912万円
- 変動費率10%、固定費月25万円 → 粗利率90%
- 年粗利=912万×0.9=820.8万円、固定費=25万×12=300万円
- 概算営業利益=約520.8万円
年収シミュ(パターンB:幼稚園+会員)
- 月額幼稚園:45,000円×会員25名=112.5万円
- 個別レッスン:12,000円×月40枠=48万円
- 合計売上:160.5万円/月(年1,926万円)
- 変動費率15%(スタッフ・備品増)、固定費月70万円
- 年粗利=1,926万×0.85=1,637.1万円
- 年固定費=70万×12=840万円
- 概算営業利益=約797.1万円(人材化の利益弾性が高い)
5. 価格表サンプル(値上げテスト設計)
価格表(例)
| メニュー | ベース価格 | 必要時間 | 粗利率の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 体験カウンセリング(60分) | 4,980円 | 1h | 90% | その場で回数券提案 |
| 個別レッスン(60分) | 12,000円 | 1h | 90% | 出張は+交通実費 |
| 回数券(5回) | 55,000円 | – | 92% | 実質@11,000円 |
| 幼稚園(週2・月8回) | 45,000円 | 日中 | 80–85% | 定員管理が要点 |
| オンライン相談(30分) | 3,500円 | 0.5h | 95% | 成約前の不安解消 |
| サブスク会員(情報+特典) | 980円/月 | – | 95% | LTVブースト |
値上げテスト
- A/Bで体験価格を±1,000円、CV・回数券移行率の変化を4週間で評価。
- 閾値:体験CVが−10%以内で、回数券移行率が+3pt以上なら値上げ採用。
- 季節要因(4–6月、10–12月の繁忙)も補正。
6. 地域係数・メニュー設計・オンライン化

- 地域係数:家賃×来店距離×所得で受容単価が変わる。
- メニュー:幼稚園×回数券×個別の三層で稼働を平準化。
- オンライン:相談・座学・アフターでLTVを延伸。
地域係数の考え方
- 家賃水準と人口密度が高い都市部は単価↑、獲得コスト↑。
- 郊外は定額会員で安定化しやすい(来店頻度を確保)。
7. 法務・税務・労務の要点
- 動物取扱業登録、賠償責任保険は基本。
- 契約書(役務・返金・免責)と個人情報の管理。
- 税務は白→青(控除)→法人成りの順に検討。
相談先の例
- 行政の動物取扱窓口/商工会/社会保険労務士/税理士/弁護士。
- 当協会カリキュラム(監修講座)で標準書式を整備。
8. よくある失敗とリスク低減策
- 失敗:体験が安い→回数券提案が弱い→LTVが伸びない。
- 対策:体験〜提案の台本化(質問→共感→再定義→提案)。
- 失敗:固定費を先に膨らませる。
- 対策:損益分岐=固定費÷粗利率から逆算し、上限ルールを決める。
- 失敗:広告の“出しっぱなし”。
- 対策:CTR→CVR→LTVの三段KPIを毎月検証。
- 失敗:価格据え置き。
- 対策:四半期ごとに値上げテスト。
- 失敗:属人運営で拡張不能。
- 対策:SOP/台本/チェックリストで人材化。
9. 意思決定フロー(雇用→独立→拡張)
- 雇用で実績と導線を学ぶ(半年〜1年)。
- 個人開業:小規模・低固定費で検証(価格×LTV)。
- 幼稚園/会員化で安定キャッシュフロー化。
- 人材採用→SOP化→2拠点目。
- FC/のれん分けで地域展開(回収≤24か月基準)。
10. FAQ
- 独立1年目の現実的な年収目安は?
固定費を抑えLTV型を導入できれば400–700万円が目安。 - 価格を上げるタイミングは?
四半期ごとに体験CV−10%以内×回数券移行+3ptで値上げ採用。 - 幼稚園は何名で黒字?
月額45,000円、粗利率80%、固定費70万円なら70万÷(4.5万×0.8)≈19.4名で固定費回収。 - 出張中心と来店中心のどちらが有利?
稼働効率は来店、獲得効率は出張が有利になりやすい。地域密度で最適化。 - 法人契約(保育園・住宅メーカー・自治体)で単価は上がる?
講義・監修・イベントを束ねると客単価×LTVが増加する。 - 広告費の目安は?
売上の**10–20%**を天井に、**獲得単価(CPA)**を毎月評価。 - 人材採用のタイミングは?
稼働率80%超・2か月連続で採用→SOP移管。 - 返金・免責はどう明記?
契約書に役務の性質・免責・中途解約・返金条件を明記。 - FCは誰に向く?
スピード重視・仕組み学習で伸ばすタイプ。自作主義には不向き。 - 相見積りに勝つには?
体験の構造化(診断→可視化→計画書→費用)で納得感を作る。
11. 年収シミュ早見表
| 単価 | 1日枠 | 稼働日 | 成約率 | LTV係数 | 月売上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 8,000 | 3 | 20 | 0.5 | 1.6 | 384,000 |
| 10,000 | 4 | 22 | 0.6 | 1.8 | 950,400 |
| 12,000 | 5 | 22 | 0.6 | 1.6 | 1,267,200 |
※式=単価×枠×稼働日×成約率×LTV
監修
- 組織:一般社団法人 全日本ドッグトレーニング協会(AJDTA)
- 著者:協会専属ライター/編集長・戦略コンサル・校閲・構造化データエンジニア
- 実務領域:ドッグトレーニング事業設計、価格/LTV設計、SOP、FC/JV、法務・税務の実務連携
- 根拠:協会カリキュラム・現場KPI・価格検証ログ・契約書式の標準化知見
- 免責:制度・税務・法務は各専門家に個別確認ください。