はじめに

日本における犬のしつけ・訓練文化は、長年にわたり「経験」と「個人の勘」に依存してきました。
その結果、正しい知識や技術が体系的に共有されず、犬との関係性に悩む飼い主や、動物福祉の観点から問題を抱えるケースが少なくありません。
私たち全日本ドッグトレーニング協会(AJDTA)は、こうした社会的課題を解決し、「犬を通して人々を幸せにする」ことを使命として設立されました。
社会的背景 ― 業界が抱える課題

日本では現在、犬のしつけや訓練に関して以下のような構造的な課題が存在しています。
1. 統一された教育基準の欠如
自治体によって動物取扱業の登録基準や取り扱い方が異なり、
「何をもって正しい教育なのか」という基準が全国的に統一されていません。
結果として、飼い主や学び手が混乱し、教育の質にばらつきが生じています。
2. 罰的・威圧的トレーニングの残存
いまだに「服従」や「支配」を中心としたしつけが一部で行われています。
これらは一時的な成果を見せることもありますが、犬の恐怖心や信頼崩壊を招くケースが多く、
長期的な関係構築には不向きです。
3. 飼い主教育の不足
行動問題の多くは、犬の性質よりも飼い主の知識不足に起因しています。
犬との付き合い方、声のかけ方、褒め方・叱り方、生活環境の整え方など、
“人側の学び”が十分に行われていない現状があります。
4. トレーナーの社会的地位の不明確さ
ドッグトレーナーという職業は専門性が高いにも関わらず、国家資格や明確な職業基準が存在しません。
それにより、業界全体としての信頼性確立が遅れています。
設立の経緯
これらの課題を解決するために、AJDTAは「学術性」「実践性」「社会性」の3つを軸に設立されました。
現場で数千頭の犬と向き合ってきた経験をもとに、再現性のある教育体系と倫理的な実践モデルを整備しました。
全日本ドッグトレーニング協会(AJDTA)では、単なる資格発行や講座運営ではなく、
「科学×現場×倫理」を柱とした持続可能なドッグトレーナー育成モデルを構築しています。
協会の目的 ― 3つの柱
1. 科学的根拠に基づく教育の普及
行動学・心理学・神経科学などの理論を土台に、再現性ある教育体系を提供します。
「感覚」ではなく「理論」で教えることにより、業界全体のレベルアップを目指します。
2. 倫理的トレーニング文化の確立
犬の尊厳と福祉を第一に考え、恐怖や暴力を用いないトレーニングを推進します。
LIMA原則(Least Intrusive, Minimally Aversive)に準拠した教育を標準化します。
3. 飼い主教育の社会的浸透
飼い主に正しい知識とマインドを届けることで、犬と人の共生を根本から支えます。
犬を変えるのではなく、飼い主が変わることで関係性を改善する「褒めトレ®」理論を普及します。
ミッション(Mission)
犬を通して、人々を幸せに。
犬は人の心を癒し、家族をつなぐ存在です。
私たちは犬の教育を通じて、人間の心も豊かにすることを使命としています。
そのために、トレーナー・飼い主・地域社会、関係してくださる全ての方が一体となり、それぞれの幸福を追求していく、学びと共育(きょういく)の輪を広げていきます。
ビジョン(Vision)
人と犬との親和。
恐怖や服従ではなく、理解と信頼によって築かれる関係。
AJDTAは、犬と人が互いに尊重し合う社会を実現します。
犬の存在を通じて、思いやり・共感・協力の輪が広がる未来を描いています。
バリュー(Value)
1. 科学的根拠に基づく教育
犬の行動を感情ではなく科学で理解し、再現性のある教育を行う。
2. 犬の尊厳を守るトレーニング
恐怖に頼らず、犬の安心と尊厳を最優先に指導を行う。
3. 飼い主教育の重視
すべての飼い主に正しい知識を届け、犬との共生を根本から支える。
4. 専門職としての倫理と責任
ドッグトレーナーとして社会的信頼を守り、誠実に行動する。
5. 共育(ともに育つ)という理念
教えるのではなく、犬・飼い主・トレーナーが共に学び合う文化を育む。
6. 継続的な挑戦と進化
変化する社会と科学に対応し、常に教育・制度をアップデートし続ける。
社会的ビジョン ― AJDTAが目指す未来

私たちは、将来的に「ドッグトレーナー」「犬の訓練士」という職業が
医療・教育・福祉と同様に社会インフラとして認められることを目指します。
そのために、
・全国共通の教育・評価基準の策定
・自治体・教育機関との連携
・地域防災や動物福祉への参画
を通して、“犬と人の共生社会”の実現に貢献します。
AJDTAが果たす使命
AJDTAは、犬を通じて人が変わり、
その変化が社会全体の幸福へとつながる未来を目指しています。
「犬を変える」ではなく、「犬と人の関係を変える」。
この信念を軸に、私たちは教育・研究・実践を通じて、
犬学の発展と社会の進化をリードしていきます。